TOKYO2020

2020年に開催予定だった東京五輪、通称TOKYO2020が、COVID-19のパンデミックの影響で1年延期となり、ようやく2021年7~8月で開催されました。今回の特別な五輪を振り返っておかなければならないと思いましたので、今回はいつもと違ったテーマに取り組んでみます。

TOKYO2020については、開催するまでの数限りないごたごたや、政治に利用されたりした結果で、日本だけではなく多くの国で開催にネガティブな反応でした(五輪開催反対57%、日本78% 28カ国世論調査 7/14(水) 11:29共同通信配信)。一方でこの調査では全体の62%がパンデミックを受けた世界が一つになる重要な機会と捉えた、としています。今思うとこの通りでもあった、と感じるところがあります。

今回の五輪延期について、ある機会があって調べたところ、いろいろと勉強になりました。
五輪の経済効果については試算では約14兆円と莫大で、内訳は直接効果2兆円+レガシー効果12兆円とのことでした。ただしこれは延期前の数字なので随分変わってきます。直接効果については、開催してもしなくても出ていく設備費などがあって、すでに経済効果という点では出ていると言ってもいいものです。一方でレガシー効果については、今後につながっていく効果ととらえることが出来ると思います。レガシー効果には5つほどあります。
 ①スポーツ(施設建設(新国立競技場、各競技会場)やスポーツ振興(パラスポーツ))
 ②社会(COVID-19への対抗・協力、世界友好)
 ③環境(都市の再活性(晴海地区)、新エネルギーの創出(再生可能エネルギー))
 ④都市(景観(電線地中化・緑化)や交通インフラ(晴海BRT、海上路、自動運転車))
 ⑤経済(観光、インバウンド、ビジネス交流)
このパンデミックの中での開催ということ自体がレガシー効果そのものになると思われますが、数年後・数十年後に今回の東京五輪のことが思いだされるのだろうと思います。そこまでレガシー効果が続くと捉えていいと思います。

開催延期が決まったときに、なぜ中止しないのか、という話が多くあったと思います。費用面で中止した方がいいのではないか、という意見も一部ありました。
そもそも五輪の開催費用は開催国の財政にどの程度のインパクトがあるのでしょうか。
調べてみると、このようになります。
東京2020開催経費(1兆6,440億円)÷2020年度GDP(526.4兆円)=GDP対比0.31%
 ※数字は総務省HPや大会組織委員会より
0.31%が多いのか少ないのか分かりにくいので、過去5回の開催費用に占めるGDP比率を比較してみます。
 シドニー 41億ドル/4157億ドル 1.00%
 アテネ 124億ドル/2279億ドル 5.45%
 北京 403億ドル/4.521兆ドル 0.80%
 ロンドン 142億ドル/2.435兆ドル 0.58%
 リオ 137億ドル/1.796兆ドル 7.62%
日本のGDPから考えれば、今回の開催費用が大きいと言っても大きな影響は考えにくいのではないでしょうか。
もちろん低コストに越したことはないの言うまでもありません。もともとの見込費用7000億円から随分増えているのは、いかがなものかと思いますが。。

ここまでかかる費用を見てきましたが、もし延期ではなく中止にした場合にどのくらいの費用が追加でかかってしまうのでしょうか。
まず、見込めなくなる収益として、無観客となったので観戦チケット料(900億円)やインバウンドを中心とした観光収入(2000億円)はなくなってしまいます。これは延期でも無観客であれば起きることです。ここで費用負担として知っておなければならないのは、国内スポンサー企業への協賛金の一部返金(3600億円)、IOC拠出金の払戻金(1400億円)、開催都市計画66条 契約の解除に伴う費用(不明)、開催都市計画68条 費用負担義務に伴う費用(不明)など、大変な金額になるものが想定されていた、ということです。さらにIOCが得ている収入のうち約70%を放映権料から得ているのですが、NBCと76.5億ドルなど、莫大な金額については中止にすると開催都市が補償しなければならないとのことがあります。これは、東京から「中止します」と言うと掛かってしまう金額なので、東京または日本から言うわけにはいかないわけです。開催が決まったら、後戻りはできない仕組みがあるということなのです。この開催都市が結ぶ契約には解除に関する項目があるのですが、明確な金額が書かれておりませんで、青天井の可能性もある大変な内容になっています。

このような大変な開催となったTOKYO2020 でしたが、開催すれば人の力に救われました。元気をいただきました。
すべての選手の皆さんの「強い決意・開催への謝意・仲間への敬意」がこれまで以上に強く感じられたことで、大会としては成功に終わったと言ってもいいのではないでしょうか。人でしか成し得ないこと、出せないことを強く感じさせてもらって、エネルギーをいただき、世界に大きな輪を作るきっかけになっていくのではないかと感じました。
月末にはパラリンピックです。おそらく無観客だと思いますが、選手の頑張りには国境はありません。エネルギーをいただきながら全世界でつながっていく機会にしていきたい。