現在の社会全体の変化に、‘これまでの事業構造’は機能しているでしょうか。
また、今‘人材’に求められる知識・能力・行動を理解し、企業も人材も将来に向けた準備が進んでいるでしょうか。
「これまで」の事業の中心にあった志向は、大きく2つあります。
まず「再現性の追求」です。これはこれまでできたこと・成功してきたこと・うまくいったことを、何度でも繰り返し出来る=再現できるかどうか、ということです。
次に「生産性・効率性の追求」です。生産性と効率性を同じ意味で使っている、またはわからずに使っている方が驚くほど多いのですが、二つは違います。生産性はやり方を工夫して、生み出す量・アウトプットを増やそうということです。一方効率性はやり方を工夫してコストや無駄を減らそうということです。これまでの志向では、機械や設備に投資をして生産性を向上させ、人の手間をかけて効率性を高めてきました。
この志向を長年続けてきた日本のビジネスでは、人材がどのように育ってきたのでしょうか。
企業から人材に関する悩みをお聞きすると、「仕事は確実にやろうとするんだけどね・・・」「業務はそつなくこなすけどもね・・・」「改善を進めてきたから、質は高いと思うよ」という声をよく聞きます。実際に研修や現場で従業員の皆様に話を聞くと「答えがあると思うので、早く教えてほしい」「先輩や上司に聞けばわかることなので自分で考えたりしない」「自分で考えろって言われて実際にやろうとしても周りが許してくれない雰囲気」などというコメントが返ってきます。
こうした状況をふまえると、これまでのやり方では「受動人材」が多くつくられているだけではないでしょうか。
これで本当によいのでしょうか。
今まさにVUCAと呼ばれるビジネス環境下にあり、加えてCOVID-19によるパンデミック、毎年起こる災害への対応、デジタル後進国から脱却を目指すためのDX推進、SDGsへの取り組み、少子化超高齢化社会の到来による人口減少、多様な価値観の受容と尊重、といった様々なこれまでとは違う状況への変化の真っただ中に我々はいます。
受動人材やその人材を多く抱える企業がこれからを生き抜いていけるのでしょうか。
今後生き残っていける組織や人材を考えてみる必要があります。
このような人材だけが、ビジネスで生き残れるのではないでしょうか。
「価値を常に思考し更新する」
「物事をクリティカルに観る」
「広く情報収集し、すぐに使えるように整理している」
「既存/異質のものを組合せて新しい考えをつくる」
「柔軟な観点を持つ」
このような人材の特徴として「柔軟な見方で“次”を追及する」「答えは自分で“思考”してつくりだす」「今にとどまらず未知へふみ出す」という実際の行動をとっています。
自社にどのくらい上記のような人材がいるでしょうか。
目的を明示し、会社として”人材に投資”してきたでしょうか。
前述の人材を多く抱えている企業や組織では「単独ではなく、組織・人々に存在しているあらゆる資源を知り、使い、強みにする」「組織同士・人々同士の活動をつなげ、連動させることで、価値をうみだす」ことで、厳しい環境下であっても事業成長を持続しています。
単に、研修を行えばいいというものではなくなってきています。これまで多く取り入れられてきた単なる階層別研修は過去のものとなりつつあります。階層に選抜人材を絡めた実施でなければ、人材への投資とは言えません。
人事・人材戦略を明確に設定したうえで、「現在の中核人材、および将来の中核人材、つまり次世代人材を育成するしくみ」をつくり「実践の連動を必ず持続する」ことこそが今現在と将来をつなげることにつながっていくのです。
”人材への投資”は経営の最重要テーマではないでしょうか。