優秀な社員の退職には、たいてい説明がつけられます。
キャリア志向が強かった。
条件面で他社に及ばなかった。
上司との相性が悪かった。
いずれも、もっともらしい。
そしてこれらに共通しているのは、原因が、社外か本人の内面か特定の個人に置かれていることです。
組織の構造には、一切触れずに済ませているのです。
能力の高い人ほど、自分の時間がどう使われているかに敏感です。
提案がいくつかの会議を経て原型・基軸を失っている。
決裁に2か月かかる。
挑戦した案件が失敗し、翌年の評価が一気に下がる。
一方で、社内調整に長けた人物が成果や実力よりも順調に昇進していく。
これらは一つひとつは小さな出来事です。
しかし優秀な人材は、そこから極めて正確に、また冷静にこの組織で能力を発揮した時の
リターンを算出しています。
彼ら彼女らは不満で辞めているのではありません。組織を見切って辞めているのです。
だから引き止めは効かない。
慰留の場で条件を提示しても表情が動かないのは、すでに計算が終わっているからです。
提示が遅すぎたのではない。提示すべきものが、条件ではなかったのです。
退職は結果であって、原因は何年も前から社内に存在していたということです。
したがって見るべき指標は、退職率ではありません。
〇一つの意思決定に要する平均日数、
〇課長や部長層が自分の判断で判断して使える金額、
〇過去3年に昇進した人物が、どんな自律した行動をした人物だったか。
この3つを並べれば、その会社が優秀さを活かす構造を持っているかどうかは、凡そ判断できてしまいます。
いずれも既存の記録から算出できますし、さらに退職者への聞き取りにより正確に数字が示してくれます。
優秀な人材が辞めているのではありません。
優秀さが報われない構造が先にあって、その構造に最も早く気づいた人から順に出ていっているということです。
逆に言えば、構造さえ変われば、いま社内にいる人材の中から優秀さが立ち上がってきます。
安直に採用市場に答えを探しに行く前に、確かめるべき場所が社内にあるのではないでしょうか。