組織の「沈黙のコスト」を測る 「優秀な人材」から組織を去る本当の理由

業績も高く、常に成果を出し、周囲からの信頼も厚い従業員が、ある日突然退職を申し出てくる・・・。上司も会社も驚き「まさかあの人が」と口を揃え、驚愕する。
しかし、当の本人はすでに心が会社から離れて久しくなっている。会議では発言が減り、会社への提案も途絶え、いつの間にか“沈黙”が常態化していた。上司も会社も気が付ないうちに・・。

”沈黙”とは単なる発言の少なさなどではありません。会社・組織への期待を捨ててしまい変化を諦めた状態のことです。声を上げても聞いてもらえず無視されている、反対意見や違う切り口からの考えを提示することが歓迎されない、それどころか、反対勢力扱いされてしまう・・・。
そのような環境では、優秀な人材ほど先に会社や組織に見切りをつけてしまいます。”沈黙”は静かに、しかし確実に組織の生産性と創造性を蝕んでいます。
「沈黙のコスト」は、離職率や採用コストでは測りきることはできません。失われるのは、何でしょうか?
失われるのは、挑戦する意欲、現場での知恵やノウハウ、会社・組織の将来を支える内発的エネルギーなのです。意見や考えがまじわらない組織では、ビジョンや戦略はすぐさま形骸化し、問題は見て見ぬふりの中に埋もれていき、表からは見えないまま着実に拡大していきます。従業員の沈黙は経営上の重大なリスクそのものなのです。

重要なのは真の「心理的安全性」の存在です。安心して発言できる文化・雰囲気や、発言を奨励し、参画意識を持てるような組織文化をどう醸成するかが、組織の持続して成長できる将来をつくりだすことにつながります。
形式的な1on1やアンケートではなく、経営層が聴く姿勢を持ち、現場の声を意思決定に反映させることの重要性を理解し、それを実際に動かす活動の積み上げがキーとなります。
まず「沈黙の兆候」を見逃してはいけません。会議で発言しなくなった人、提案をしなくなった部署や人を見えるようにしましょう。そして、定期的に「話を聴く場」をしくみにしていきます。単なる傾聴ではなく、聞いた意見を行動に移すサイクルを仕組みにして実施することが重要です。

「貴社で今、最も優秀な人材は、心から声を上げられていますか?」
優秀な人材が去るのは、他社が魅力的だからではありません。会社が“聴かない組織”になってしまったからです。ご自分の会社・組織では、誰が、どんな声を、出せずに飲み込んでいるのだろう。見過ごしたり、見て見ぬふりをしていないでしょうか。
「沈黙のコスト」を測定し、優秀な人材の声こそが、貴社の成長エンジンであると確信して、具体的な行動を起こす時です。優秀な人材を先頭に、すべての従業員にそれぞれの最高の舞台を提供し、全社一丸となった組織づくりを達成して将来を描くのは今です。